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2006年01月22日

一眼レフ? コンパクト? フィルム? デジタル? (続編2)

*「一眼レフ? コンパクト? フィルム? デジタル?」<全3部作完結です。
 (その1)デジタルカメラのこれから?/いつかは、フィルムも見直される…
 (その2)フィルムカメラのこれから?/揺れる写真教育の現場
 (その3)写真産業界のこれから?/どうなる? 写真文化振興の担い手
 (続編1)これからの富士写真フイルム(株)
 (続編2)これからのカメラ屋さん写真屋さん…店頭がRAWデータ現像所に?

これからのカメラ屋さん写真屋さん…
店頭がRAWデータ現像所に?

Eメールも普及し、以前に比べ写真の焼増しをお店に頼む機会が減ったという人は多いと思います。私もそうです。
それでも、例えば午前中に友人の結婚式典を撮影し、昼過ぎに始まる披露宴の受付でそのプリントを展示したいというとき。さらにその会場で撮った何十枚、何百枚ものスナップを、夕方からの2次会でアルバムに収めて回覧したいというとき。店頭のデジカメプリントスピード仕上げは、とても頼れるサービスです。新郎新婦にとって新婚旅行は何とも慌しいものだと思いますが、そのちょっとした合間、贈られたアルバムを機内でもレストランでも、好きなときに開くことだってできるでしょう。しかも収められたプリントは、家庭用インクジェットプリンターで印刷したものに比べ、ずっと色が長持ちするのです。
店頭の業務用プリンターは写真の色調や明るさ、コントラストなどを高精度に自動調整してくれるので、カメラ側の自動調整の誤差もかなり補正されます。これを1枚1枚、パソコンのレタッチソフトに読み込んで自分で補正しようとなると、気の遠くなるような手間と時間のかかる作業になってしまいます。
ただ本当のところは、欲を言えばもっと、店頭プリントの品質にはさらなる向上を望みたい、という気持ちも実はあります。

その打開策が、カメラRAWデータからの直接自動プリントの実現です。
デジタルカメラはイメージセンサーで捉えたアナログ信号をデジタル信号に換え、内蔵処理エンジンで調整しながら画像生成し、フラッシュメモリーなどのメディアへJPEG等のファイル形式で保存します。その画像生成前のデジタル信号がカメラRAWデータと呼ばれるのですが、それを専用のファイル形式でメディアへ書き出し保存できるカメラもあります。こうすると、そのカメラのRAWファイルに対応したパソコン用ソフトにデータを読み込み、通常は撮影前に調整する色調やコントラストなどを後からきめ細かく設定し、画像生成することもできるのです。この後処理を通称「RAW現像」、対応ソフトを「RAW現像ソフト」と呼び、RAWファイルは最近「デジタルネガ」と呼ばれることもあるようです。
私が期待しているのは、このようなRAWデータの自動現像(調整)機能が、店頭の業務用プリンターにも処理エンジンとして内蔵されることです。実はすでに、家庭用インクジェットプリンターの中にはそれに近いことができるドライバーソフトと対になった製品も登場しているのですが、パーソナル用のレベルでは処理能力の将来性について疑問は否めません。

RAWデータのファイル書き出しはカメラ側にも相当負荷がかかるらしく、RAWモード撮影機能を備えた機種は今のところ、デジタル一眼レフや一部のコンパクトデジカメに限られます。その中にあっても、保存や消去、モニタ再生などが快適にできる製品はいくらもありません。RAW現像ソフトも多くはまだ開発途上中にあることから、プロの間でもスピードが求められる仕事の場合、現場での実用性については否定的な意見が多いようです。
ただそれも、店頭でRAWデータ現像の受け入れ態勢が整えば話はまた違ってくるでしょう。

業界標準化は近いか?
期待される富士写真フイルム(株)やニコン(株)のノウハウ

富士写真フイルム(株)(以下、フジフイルム)が2004年11月に発売したスタジオ向けデジタル一眼レフ、FinePix S3 Pro(出力画素数約600万、税込約26万円)は、その素晴らしい色調や諧調の再現力がプロから高い評価を得ました。開発にはカラーフィルムの技術者も参画したらしく、長年蓄積されたノウハウの賜物だとも言えそうです。
RAWモード撮影も可能ですが、同社は撮影画像をカメラと直結したプリンターへ即転送し、その場でプリントが仕上げられるシステムを目指したとのこと。そのため、同社の店頭用プリンターとの相性も良く、セットでの導入を検討した写真館も多かったようです。
S3 Proの前の機種、S2 Proを私も一次期使ったことがありますが、安定した画像の仕上がりには確かに当時の他社製品よりも抜きん出たものがあったと感じています。

一方、ニコン(株)(以下、ニコン)が昨年12月に発売したばかりのハイアマチュア向けデジタル一眼レフ、D200(税込20万円未満)は、約1000万画素という高画質と、RAWモードでも極めて快適な高速大量連写機能を備え、比較的求めやすい価格ながらもプロ用機に匹敵する高性能が広い層のユーザーから人気を集めています。
また、ニコン専用のRAW現像ソフト、「Nikon Capture4」は、機能、処理能力とも現在最も完成度の高いソフトの1つとして定評があります。

ところで両社は、デジタルフォトテクノロジーの黎明期からお互いに技術協力を重ねてきた関係にあり、かつては共同開発した製品を両社同時に販売した経緯もあります。フジフイルムのFinePix S3 Proシリーズも、カメラ本体の部品はずっとニコンから供給を受けていて、もちろん、交換レンズやアクセサリー類もニコン製品と共用できます。
ここでもし、両社がさらに協力関係を深め、撮影からRAWデータの自動現像、プリントまで一括管理する店頭サービスシステムを開発したらどうなるでしょう。近い将来、コンパクトデジカメにも快適なRAWモード撮影機能が備わり、私たちは撮影後データをお店に預けるだけで、良質のプリントを短時間で得ることができるようになるかもしれません。さらにきめ細かいオーダーに対しては、店頭からブロードバンドインターネットでフジフイルム系列の現像所へファルが転送され、RAW現像に精通した熟練オペレーターの手で最高品質のプリントが仕上げられるようにもなるでしょう。
銀塩カラー印画紙には、インクよりずっと広い範囲の色彩を再現する能力があります(注)。RAWデータからの印画紙出力なら、専門業者のノウハウによりその能力が最大限に引き出されることが期待できます(すでフジフイルム系列の現像所では、FinePix S3 Proなどのプロ用自社製品に限られますが、RAWデータからのプリント受注サービスを写真館対象に始めています)。
急ぐ場合、ある程度のオーダーには店頭での調整も不可能ではありません。写真の専門店のスタッフなら、それに応える意欲を最初から身に付けているのですから。

望ましいのは、そのような店頭サービスシステムが両社の独占事業になるのではなく、写真産業界の標準規格として自由競争市場に広く公開されることです。ただし、開発に関わる知的財産所有権の問題もありますから、標準化の流れについていけない企業はどうしても出てくるかも知れませんが。

1月19日付記事でも述べましたが、カメラ屋さんや写真屋さんが「地域社会の文化や人の交流拠点」という大事な役割を今後も担い続けられるかどうか、今、写真産業界全体に大きな課題として投げかけられてます。まさに正念場。私たちがどこまでその存在を強く望むかにかかっていると言って良いでしょう。

〔3月7日補足〕

(注)後段で「銀塩カラー印画紙には、インクよりずっと広い範囲の色彩を再現する能力があります」と記しましたが、現状では銀塩カラー印画紙の能力を最大限に引き出せるデジタルプリンターは存在しないようです。果して露光用の出力部の性能に技術的な限界があるためなのか、詳しいことは私にもよく分からないのですが、同じ画像データでも、オペレーターの腕次第では最新のインクジェットプリンターの方が豊かな色調を再現できる場合もあるようです。今後の技術開発の動向は勉強中ですが、コニカミノルタのように印画紙の生産を打ち切るメーカーも出てきている昨今、比重としてはインクジェットプリンターの方が、より将来性を期待できるように思われます。なぜなら印画紙の場合需要が減ると、現像薬品も含めそれらの原材料を提供する製紙会社や製薬会社の積極的な協力が得にくくなり、仕入れ値も高騰する心配があるからです。現像薬品の廃液処理にかかる費用も値上げが予想されることから、ゆくゆくは銀塩プリントは廃れてしまう運命にあるのかもしれません。


*「一眼レフ? コンパクト? フィルム? デジタル?」<全3部作完結です。
 (その1)デジタルカメラのこれから?/いつかは、フィルムも見直される…
 (その2)フィルムカメラのこれから?/揺れる写真教育の現場
 (その3)写真産業界のこれから?/どうなる? 写真文化振興の担い手
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 (続編2)これからのカメラ屋さん写真屋さん…店頭がRAWデータ現像所に?

項目: 写真・カメラ

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